本発表ではスペクトル情報とタイミング情報を同時にモデル化することにより、ブラックホール連星(BHB)の新しいデータ解析手法を紹介する。本研究の根幹をなす統計モデルである状態空間モデルは代表的な時系列モデリングの1つであり、観測モデルとシステムモデルの2つのモデルで時系列を記述する。システムモデルは状態変数の時間変化の様子を、観測モデルはその状態変数の関数として観測変数が得られるとしてモデル化する。本研究では、状態変数にエネルギースペクトルの成分の変動、観測変数にバンドごとのカウントレートの変動を対応させることでエネルギースペクトルの情報を組み込んだ時系列モデリングが達成している。状態変数の推定によって、これまで得ることのできなかったエネルギースペクトル成分の時間変動を推定することが可能となる。発表ではこの手法をBHBである MAXI J1820+070 に適用した結果と得られる知見を紹介する。
殆どの脈動変光星は超低周波領域において,周波数に逆比例するパワースペクトルを持つ.このいわゆる1/f揺らぎ(ピンクノイズ)の起源として,多数の対流領域が協同して作る波のうなり(振幅変調)であるとするモデルを提案する.そのもっとも簡単なものとして,ローレンツモデルを多数連結した,いわば多気筒エンジンモデルを構築する.そして,このモデルが1/f揺らぎを再現することを示す.時間が許せば,この1/f揺らぎがブラックホール・ディスク系や太陽フレアにも見られ,共鳴に由来するうなりとして説明できることも示す.
質量比は、接触連星において重要なパラメータのひとつだが、その分光値の取得や測光データを用いた推定には手間がかかる。本研究では、接触食連星の光度曲線の数値微分を利用し、その質量比を簡便に推定する方法を考案した。講演では、推定方法を紹介するとともに、従来の測光質量比の推定の際に問題となる第三体の影響について考察する。また、我々の推定法がうまく機能する背景についても議論する。