Speaker
Miki Kurihara
(ISAS, UTokyo)
Description
突発的な恒星フレアの現場においては、X線放射の主成分となるT ∼10^7−8 Kの衝突電離平衡(CIE)プラズマ
に加え、非平衡プラズマの発生が予想される。しかし、その観測的な存在証拠は乏しい。天球上のどこで発生す
るか予測できない突発的なフレアを捕捉し、詳細解析することが単一の装置でできないことが一因にあげられる。
我々は2017年6月に開始した「MANGA (MAXI and NICER Ground Alert)」プロジェクトでこの困難を克服する
ことに成功した。これは、低感度だが広視野を持つ全天X線監視装置MAXIで検出した突発天体を、
狭視野ながら高統計X線観測ができるNICER装置で即時追観測するシステムである。
本研究では、MANGAの代表的な成功例である、RSCVn型連星おひつじ座UX星(UX Ari)が2020年8月
17 日に起こしたフレアイベントを扱う。MAXIによる検出の約90分後、NICERで初めてフレアピーク以前か
ら観測を行うことに成功し、十分減衰するまで5日間ほど継続的に観測できた。0.5-8 keV帯域において、ピー
ク時のX線光度は2×10^33 erg s−1、フレア期間のX線放出エネルギーは∼10^38 ergであった。Fe XXV Heα
およびFe XXVI Lyα輝線の強度比の変動を調べることで、非平衡電離プラズマの可能性について検証した。
X線スペクトルはフレア全体でCIEプラズマモデルと整合していたが、フレアのフラックス上昇段階では、CIEから
外れたIonizingプラズマモデルでもスペクトルを説明できた。また、フレアループのサイズを3 × 10^11 cm、
ピーク電子密度を約4 × 10^10 cm^−3と推定した。