Speaker
Shun Inoue
(京都大学)
Description
恒星フレアにおけるエネルギー解放が、各波長の放射とプロミネンス噴出等のプラズマの運動にどのような割合で分配されているのか、観測的に調査された例は少ない。また、長年恒星フレアの広帯域スペクトルモデルとして考えられてきた9000 − 10000 K の黒体放射が観測結果と整合しないことも指摘され始めている (e.g., Kowalski et al. 2019)。本研究では、M型星EV Lacに対し、NICER、Swift、TESS、なゆた望遠鏡によるX線、紫外線、可視光同時観測を2022年10月24-27日の4晩実施した。その結果、10月25日21時30分ごろに3.4 × 10^32 erg を白色光で解放するフレアの多波長観測に成功した。本フレアには、Hα 線でのフレアピークから約 1 時間後に −100 km/s 程度の青方偏移成分が現れる、白色光の増光時には3 分ほどの緩やかな増光と 1 分ほど の急激な増光の二段階が観測される、などの特徴が確認された。本発表では、エネルギー分配や広帯域スペクトルの観点から、上記のイベントの詳細を報告する。