Speaker
Yuto Kajikiya
(東京工業大学)
Description
M型矮星のフレアでは、Hα線の輝線輪郭における赤方偏移および青方偏移の非対称性がしばしば観測される (e.g., Notsu et al. 2023)。これらの非対称性はフレアに伴う噴出現象を示唆している可能性があるが、①高時間分解能での測光分光同時観測例の不足と、②非対称性の統計的解析の欠如により、その起源に関する理解は未だ限定的である。
本研究では、活動的なM型矮星YZ CMiを対象に、京都大学せいめい望遠鏡を用いた可視分光とTESS衛星での可視測光による同時観測を行った。その結果、27例のフレアを検出し、そのうち8例でHα線の顕著な非対称性(5例が赤方偏移、3例が青方偏移)が確認された。
統計的解析の結果、Hα線の非対称性を示すフレアの発生頻度は自転の位相に対する依存性があり、巨大黒点の見える位相で頻発する傾向が確認された。また、白色光で顕著な増光を示すフレア(白色光フレア)は、そうでないフレア(非白色光フレア)と比べ非対称性を示す頻度が高い傾向が確認された。これらの観測結果は、M型矮星のフレアにおけるHα線の非対称性の起源を理解する上で、新たな洞察を提供する。