Speaker
Mitsuhiro Ishida
(横浜市立戸塚高等学校)
Description
Be星(γCas 型変光星) は、光度階級がIII-VのB(一部OまたはA) 型星のうち、過去に一度でも水素の輝線がみられた星として定義される。近年のシミュレーションにより、円盤が中心天体からの質量減少に対応して膨張すること、質量減少が止まると、徐々に消滅することなどが報告されている(Carciofi et al. 2013)。しかし、中心星からの円盤放出メカニズムや、円盤への角運動量輸送機構など分かっていないことも多い。講演者は 2018年9月より、勤務校の天文台での低分散分光観測で、水素輝線等価幅に加え、観測の報告が少ないバルマー逓減率 (本研究ではHαとHβ輝線等価幅の比) の分光モニター観測を行っている。その結果、バルマー逓減率に有意な変動を示す Be星(δ Sco、π Aqrなど) が確認され、それぞれの伴星が近星点を通過する前で減少傾向、通過後で増加傾向であることが分かった。この現象は円盤の有効温度が近星点前で高く、後で低くなることを示唆している。さらに、Be星スペクトルデータベース (BeSS) に登録されている高分散分光データの解析結果より、δ Scoの Hα、Hβ 輝線の裾の幅 (FWHM) が近星点から離れると減少し、近づくと増加する傾向が見られた。バルマー逓減率やFWHMの変動は、伴星が未発見のBe星 ψ Perでは見られなかった。これらの結果より、Be星の円盤への角運動量輸送機構に、伴星が影響を与えている可能性が大きい。