Speaker
Mariko Kimura
(Kanazawa University)
Description
GK Perは、強磁場白色矮星と低質量星からなる近接連星系で、白色矮星の周囲に降着円盤を持つ。1901年に新星爆発を起こしたのち、数年おきに矮新星アウトバーストを起こすようになった天体である。アウトバーストの原因は、水素の部分電離に伴う降着円盤の熱不安定であると考えられている。降着円盤は主に可視光で観測され、円盤内縁からの降着ガスが白色矮星の磁力線に沿って自由落下する際の衝撃波加熱により、白色矮星表面に根付いた高温プラズマである降着柱からX線が放射される。
私達は、この天体の2023年のアウトバースト中、X 線望遠鏡NICERとNuSTAR衛星によるX線観測とTomo-e Gozenによる可視光高速観測を行った。アウトバースト終了間際の広帯域のX線スペクトルからは、白色矮星表面からのおよそ60 eVの黒体放射成分と、降着柱由来の最高温度およそ50 keVの制動放射するプラズマ成分が検出された。また、周期解析の結果、X線ライトカーブから330秒と351秒(白色矮星の自転周期)の2つの周期信号、可視光ライトカーブから約5700秒の準周期信号を発見した。X線と可視光の完全同時ライトカーブの相関は弱く、X 線と可視光の変動の起源は異なる可能性が高い。X線の2つの周期信号の振幅は高エネルギー側ほど小さく、視線方向に対してX線放射領域を隠す、円盤内縁付近のガス塊や密度の高い降着ガスなどの吸収体の存在が示唆される。また、5700秒の周期は330秒と351 秒の会合周期であり、白色矮星や歪んだ構造を持つ円盤内縁部からの放射による降着円盤の照射効果の周期変化を反映していると考えられる。本講演では、これらの観測結果を紹介し、X線と可視光の周期信号の起源を考察する。