Speaker
Megumi Shidatsu
(Ehime U.)
Description
X 線連星は、星質量ブラックホールあるいは中性子星と通常の恒星からなる近接連星系であり、相手の恒星からコンパクト天体へのガス降着により、X線などで明るく輝く。また、そのガスの一部は外向きに加速され、ジェットや円盤風(降着円盤に沿った噴出流)として噴き出すが、その噴出機構や周囲に与える影響の程度はよくわかっていない。X 線連星の降着円盤は主に X 線から可視光帯域の電磁波を放射し、ジェットは主に電波から可視光で輝く。また、円盤風は X 線帯域などで青方偏移した吸収線として観測される。したがって、X線連星の降着・噴出流の完全理解のためには、増光中に多波長で観測を行うことが必須である。 2023 年 9 月に打ち上げられたX線衛星 XRISM に搭載された新技術検出器Resolve は、従来より1桁優れたエネルギー分解能を実現する。Resolveを用いることで、円盤風の詳細な吸収線形状が初めて分解され、円盤風の噴出機構を解明し、周囲への影響を定量的に見積もることが可能になると期待される。また、多波長観測を組み合わせることで、ジェットの構造や、降着円盤の構造と円盤風・ジェット噴出の関係性を理解できると期待される。本講演では、これまでの観測結果をふまえつつ、XRISM によるX線精密分光と多波長連携観測の展望について述べる。