Speaker
Tomoki Matsuoka
(中央研究院天文及天文物理研究所)
Description
近年の超新星の観測により、一部の超新星親星は重力崩壊の瞬間に高密度な星周物質を保持していると信じられている。これは大質量星の、恒星風以外のメカニズムで駆動される質量放出機構の存在を示唆しており、従来は単独星の活動に由来する機構が考案されてきた。一方我々は、大質量星の多くは連星を組んでいることに注目し、連星間の質量輸送に付随する形での質量放出機構を考案した。具体的には、恒星進化計算によりII型超新星を再現する連星の進化を解き、主星から引き剥がされたガスの一部が連星系を脱出すると仮定して星周物質の構造を構築した。その結果、ロッシュローブオーバーフローの開始とともに質量輸送率が増加すること、それに伴い星周物質はシェル状またはクリフ状といった多様な構造を実現することを見出した。このような構造は超新星の発生後からおよそ数年後の観測でトレースできるうえ、過去の超新星観測で確かめられている星周物質の兆候と整合する可能性がある。本研究は、超新星親星の星周物質形成における連星相互作用の重要性を提案している。